『あの船の航海と日常』ネタバレだらけの各イラスト解説
■P.4出航準備
港で荷物を積みこむおじさんとそれを指揮するおじさんです。あらかた荷物は積みこみ終えているみたいです。この時点で原作ゲーム内とは違う世界線であることを示すため、サミュエル・ピーターズ兄さんに大きく登場してもらいました。鐘楼員はまだ準備中のようで、マストはたたまれています。
■P.6表紙その2
スペースと構図の都合上、どうしても表紙に入らなかったみなさんに登場してもらいました!それぞれ関係性の深い人たちと組んでもらっています。表紙とあわせてクルー全員登場になっています。この等身のちびキャラはかわいらしくて、描いていてとても楽しいです。ファンシー・オブ・オブラ・ディンです。
■P.8出航
船長!操舵手!船長さん、原作の3Dモデルでは目元が暗くなっていて目がはっきり見えない方です。ゲーム中では苦難続きの航海でしたが、こんなおだやかな表情をすることもあったのではと想像しました。職務上操舵手とはツーカーな仲なのかなと思います。操舵手のダルトンさん、結構おしゃべりさんぽい雰囲気をしていると思います。ロケ地は船長室前の操舵スペースです。
■P.9六分儀
帆船の航海士らしい道具といえば…と考えた時に浮かんだのが六分儀で、描いてみたいモチーフになりました。士官候補生は航海士たちから指導を受けることも多かったようなので、教えるのが得意そうな一等さんにお願いをしてみました。各航海士さんたち、いろいろ得意分野がありそうですよね。そんな妄想から13ページの航海士たちに続きます。船尾側甲板でのできごとです。
■P.10マストの鐘楼員
鐘楼員の鐘楼員らしい場所と言えばやはりマストの上、ということで、皆さんに登ってもらいました。見開きページのため、ページをまたぐルイスとリ・ハンの二人には腕をちょっと長く伸ばしてもらいました。実際の帆船のマスト作業、どこかの港で生で見てみたいものです!
■P.12司厨手集合
普段はそれぞれの仕事場でそれぞれ働いている司厨手のみなさんです。ロケは砲列甲板船尾側の士官用サロンで家具を端に寄せて行われました。厨房のロケでもよかったのですが、さすがにこの人数は入らなかったので、広い部屋に移動してもらいました。
■P.13航海士たち
衣装がカッコイイ海の男たち航海士です。副船長的な位置にいそうな1等さんを先頭に、2等さんにはコンパス、3等さんには望遠鏡、4等さんには地図と、航海に使う道具をそれぞれ持ってもらいました。ゲーム中ではそれぞれ独自に業務を行っているように見えましたが、実際の航海ではどう役割分担していたのでしょう?みなさんには船尾側甲板に立ってもらいました。
■P.14ニコルズ一派
彼らの不敵な感じをまとめて描いてみたくなったので集まってもらいました。この方たち、航海中のいつの時点でこのメンバーが決まったのでしょうか。ひとあつめにもギャリガンが暗躍しているような気はしますが…。場所は操舵スペースの真上の船尾甲板上です。手すりに座るのは訓練を積んだ彼らならではです。後列の人たちには踏み台をつかってもらいました。
■P.15ルイスとマバ
非番の海が穏やかな時などにトレーニングをしていそうな二人です。年の差師弟関係でしょうか。戦うおじいちゃんとおにいさん、かっこいいですよね。ロケ地は甲板側面、乗り降り口の近くです。
■P.16休憩
年代が近そうな仲良しおにいさんたちです。こっそりちょろまかしてきたお酒の瓶を出してこっそり酒盛りなのでしょう。本来穏やかな3人ではないかと推察しています。最下甲板の事務長執務室で撮影しました。大人の男性が三人入るとぎゅうぎゅうになりそうです。
■P.17寄港地にて
船上ではなく、途中立ち寄った港町で馬で移動するマーティンと3等付きのロデリックです。航海中には荷物の積み下ろしの都合上、途中に立ち寄った港でしばらく足止めをくらうこともよくあったそうです。マーティンに乗馬ブーツをはいてもらいたくて、厩舎まで来てもらいました。
■P.18腕相撲
ハマドゥ・ディオムとソロマン・サイド、オブラディン号のマッシブ自慢な二人に力比べでをしてもらいたくて甲板上で勝負してもらいました。昔、某有名な狩りゲームの拠点で、屈強な狩人同士が樽の上で腕相撲をしていたのが妙に記憶に残っていて、このシチュエーションが浮かびました。ギャラリーの応援にも熱が入ります。たまたま通りかかったマーカスも夢中になっています。
■P.20雨の中の航海
雨に濡れた4等さん、4等付きのデービーくんと、甲板員のおじさんたちが描きたくて描いたような一枚です。雨や時化の中を航海している様子は帆船の過酷さがよくわかる場面で、マストを操作するのも総員がかりで大仕事だったようです。雨の中の航海はまた描いてみたいと思わせます。帆船では大時化時などの大作業を終えた後、船長からラム酒が支給されることも多かったようで、P.24のラム酒の宴に繋がっていきます。
■P.22調理・芋をむく■P.23生肉の塩漬け
芋をむく、生肉を処理するおじさんと士官候補生たち。当初このイラスト集を作るにあたって、まず描きたかった場面です。士官候補生は航海術の研修だけでなく、船内のいろいろな雑用も手伝っていたようです。お芋はすぐに傷んだり芽が出てしまうので、航海の初めの方でしか食べることができなかったようです。
■P.24大仕事の後のラム酒
ラム酒の宴、ルイスとセフトンが船長より支給されたラム酒をみんなに配って回ります。ゲーム上のハンモックの班ごとに着席してもらっています。一番右の机だけがイレギュラーで、甲板員鐘楼員以外のお仕事のおじさんたちがいます。たぶん仕事が済んだところを便乗しているのではないでしょうか。構図上片方側しか描かれていませんが、反対側にもインド組や中国・シャーリー組、ピーターズ兄弟やラーズ、オミッドたちもいて、にぎやかにラム酒を楽しんでいるのだと思います。場所は砲列甲板の左舷側です。
■P.26船の修繕
船の修繕、口に釘を咥えるのは急に揺れる船内だと危ないかもしれません。しかし、親方なら大丈夫でしょう。航海中木造の船はいたるところで修繕を必要としていたようで、船内でもかなり重要なお仕事だったようです。マーカスは木槌を持って、床の木材をしっかりと固定する役割のようです。親方の力強さに、ついつい線が太くなってしまいました。おそらく船底室の傷みやすい箇所を修理しているのだと思います。
■P.27船医・怪我の手当て
最下甲板、ゲームでもおなじみ診療所です。おサルさんはどこかをお散歩中なのでしょうか。病気だけでなく、怪我や外科的な処置もエバンス先生とウォレスにおまかせです。心配してラーズも付き添ってきました。ティモシーは落ちているロープに引っかかって転んでしまったらしいです。
■P.28甲板員整列
余韻を残すには出航準備から始まり、航海を経て再びまた出航するのがいいかと考え、甲板員が整列して往くオブラ・ディン号をラストに置きました。次のページでE.S.先生が見送っています。商業帆船のメンバーはだいたいが一期一会で毎回一定ではないらしいです。そう考えるとこれはなかなか珍しい場面なのかもしれません。
以上で作品解説になります。楽しんでいただけましたら幸いです。
ふろく
参考図書:
『帆船軍艦』リチャード・プラット、あすなろ書房(2021)
『十九世紀イギリスの日常生活』クリスティン ヒューズ、松柏社(1999)
『帆船の社会史―イギリス船員の証言』篠原 陽一、高文堂出版(1983)
『船の食事の歴史物語』サイモン・スポルディング、原書房(2021)
『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』パニコス・パナイー、創元社(2020)
『図説 イギリスの歴史』指 昭博、河出書房新社(2002)