『船上料理人の料理本』あとがきと解説
都度あるごとに何度も言っていたのですが、原作ゲームをクリアして思ったのが、とにかく料理人がただ料理をして、それを船員が食べるだけの本が欲しい、という事で、今回欲しいなら作ってしまえ、と作ってしまったわけです。
本のあとがきにも書きましたが、せっかくなので、今回はイラスト集ではなく動きのあるまんがに挑戦してみようと思い、初めてのまんがを描いてみることにしました。…が、読むのは簡単でも描くのはなかなかに難しく、コマ割りから大苦戦、いえ、コマ割りどころかもっと前のプロットやお話作りからわからないこと初めてのこと連発で、洋ゲーフェスのイベントに申し込んだのが昨年11月でしたが、ネームができたのがイベント1ヶ月前というなかなかのゆっくり作となったのでした。ネームには頻繁にニコラスが登場してきました。食べると言えばニコラスだったのでしょうか…。オールキャラに登場してもらいましたが、途中まではほぼ士官候補生とニコラスが食べていたのではないでしょうか。イベントまでに描き上げられるのかドキドキしましたが、なんとか間に合ってよかったです。
今回作中に登場した料理は、実際に船で作られたぽいものを選んだものの、歴史考証は甘々なので、いろいろと間違っているかもしれないので気をつけてください。もう少しここに時間を取れたらよかったなと思いました。調べているとお腹が減ってしまうのも夜中だと困りますね。
では、各話解説になります。
■オーツ麦粥
ひとまずは炭水化物を補給、ということでお粥です。マバは若そうなので食欲もすごそうですよね。粥をもそもそ食べるネープルズはお気に入りです。固いビスケットよりやわらかいお粥です。
■プディング
ギャレーと言えばプディングを作ろう!という思い込みがなぜかあって、現代のデザート系のものではなく、クラシックなお肉のプディングを作ってもらいました。肉といえば若者にどうしても食べて欲しかったので士官候補生の3人に登場してもらいました。やはり若者がお肉を美味しそうに食べるのは良いと思います。固いビスケットよりお肉です。
■ザワークラフト
これは船でも保存食として登場したようです。個人的に酸っぱい野菜は好きなので、わたしはオヘーガンよりロデリック寄りになりますね。しかし、なぜこの二人なのでしょう。すっぱいキャベツのことを考えたとき、なぜかロデリックが一番に浮かんだのです。不思議です。なぜかクセのある食べ物が好きそうに思えたのです。
■士官用のごちそう
一般船員が食べる質素なものだけでなく、士官用のちょっと豪華な料理も作ってみたくなりました。寄港地などでは近くに停泊している船の船長を自船に招いたりして、晩餐会などをすることもあったようです。鹿肉はオファレルさんのとっておきとして船に持ち込んでいたようです。
■魚のフライ
来ました!セフトンさんといえば魚のフライです!これは絶対外せないテーマです。揚げ物は若者に食べて欲しかったので、またまた士官候補生の3人に出てもらいました。本当は白米もつけて欲しいですね。これを描きながら魚のフライが食べたくなったのでフィレオフィッシュを食べました。フィレオフィッシュ、美味しいですよね。四等さんと甲板長は業務上現場で打合せをすることも多そうです。甲板でミーティングしてもらいました。
■事務長と
セフトンさんと多く接する人たちと考えたとき、食材在庫管理の観点から、事務長との絡みはあるだろうと思いました。神経質そうな事務長なので、それは長い時間くどくど言ってそうだけれど、セフトンさんは聞き流していそうだなあ…。
■フカヒレスープ
これは完全に創作になりました。何かの本で「サメは獲ることはあっても食べない」と読んだので、オブラディン号だとちょっとどうなるかなとやってみたものです。アジア系とのコラボレーションは、『シナモンとガンパウダー』という海賊料理小説の影響が大きかったと思います。こちらは日本の味噌を英国系海賊船の料理人が使っていて、そういうのも面白いなと思ったからです。
■乾燥えんどう豆のスープ
〆はデザートでもよかったのですが、商業船の普通の船員にデザートは出ないだろうなあ、というかセフトンさんはデザート作るような料理人ではなさそうな気がして、本の締めとして甘い物ではなくホッとあったまるえんどう豆のスープに登場してもらいました。豆のスープは本当に美味しそうで、また作ってみると実際美味しく、これが出た日は、寒い地域を航海している時は特にうれしいだろうなあと思いました。
■蟹
カニ食うべし!!!!
参考図書:
『歴メシ!決定版 歴史料理をおいしく食べる』遠藤雅司、晶文社(2022)
『十九世紀イギリスの日常生活』クリスティン ヒューズ、松柏社(1999)
『船の食事の歴史物語』サイモン・スポルディング、原書房(2021)
『シナモンとガンパウダー』イーライ・ブラウン、三角和代訳、東京創元社(2022)